I LOVED 2
モラリアでの武力介入。予定ではミッションは呆気なく終わるはずだった。しかし現れたたった一機のMSに刹那は足止めをくらったのだ。 MSが見せる懐かしい戦い方。ことごとくかわされる攻撃。そして的確に与えられるダメージ。 刹那の手元が震えた。こんな動きをするのは刹那が知るかぎりたった一人。 クルジスで神の名の元に、テロ活動を煽ったあの男。彼の意図する所を推し量る術はないが彼なりの理念があったのだろう。今でこそ矛盾を覚えるが当時の刹那にとって心酔した男の言葉はすべてだった。 そのアリーが生きている可能性はないのにと、刹那の心が揺れる。 アンフの攻撃にアジトは破壊され、大人は姿を消した。瓦礫の下から聞こえる声、重機がなく手作業でしか出来なかった瓦礫の撤去。しかし迫る火に断腸の思いで救出を断念したのだ。 彼であるはずはないのに、心も身体も期待に震えてやまない。そして気がつけばコックピットを出てしまっていた。 疑いに銃を構えたが遠目でも解る。あれは自分が唯一愛した男だと。 生きていた、そしてまた会えるなんて。 運命としか言いようがなかった。 もしデュナメスが間に入ってこなければ、銃を下ろしヘルメットをとってアリーの名を叫んでいただろう。 その日、潜伏地へと戻るとロックオンは刹那の無謀な行動を責めた。 理由を問うロックオンに満足な答えを与えられるはずもなくただ黙って殴られる。 しかし、夜、一人となるといても立ってもいられなかった。 まるで逃げ出すように浜辺へと足を向ける。 もう一度アリーに会いたい。そして今度こそ一緒に連れて行ってくれと請いたかった。 彼が生きているなら、この組織に入った理由もなくなる。それどころか自分の手で愛しい男の命を奪う事にもなりかねない。 しかし戦争を根絶しなければ自分のような人間が増えるだけなのだ。 始めてしまった事に対する責任。エクシアのパイロットとして、マイスターとしての責任がある。途中で投げ出せるものではない。 身体が引き裂かれそうだった。いやいっそ二つとなればどれだけ良いか。もしくは切り捨てられれば。 (どちらを?) 決まっている。 あの時から自分にはアリーしかいないのだから。 生きていたのを単純に喜ぶ事が出来ればいいのに、まさか敵となるなんて。 今すぐアリーの腕の中に飛び込んで、もう大人になったのだと、二度と離れないと言いたかった。 「泣いてるのか」 「…ロックオン、」 突然かけられた声に振り向くとそこにはロックオンが立っていた。 はりつめていた心が保てなくて醜い顔をしていただろう。 生きていた、嬉しい、だけども悲しい。 「そんな顔も出来るんだな」 見てはいけないものを見てしまったかのようにロックオンは苦笑いを浮かべていた。 「お前を人間にした奴が憎い。あぁ憎いぜ」 ロックオンは刹那の肩を掴むと強引に抱き寄せる。 「な、何を」 「黙ってろ」 刹那の衣服に手をかけると、意図するところが解ったのか刹那は大きく目を見開いた。 「いやだ、」 震える声が引き金だった。箍が外れるとはこの事だろう。 予想外の行動、予想外の表情。 誰がこいつを人間にしたんだ? 俺じゃないなら誰なんだ? 疑問に続くのは願望。 こいつを人間にしたのが俺であったなら……。 震える唇を塞ぎ、その悲鳴までも絡めとる。 どんっと胸を叩く手。しかし頭一つ分の身長差は大きかった。 「やめろ、」 ロックオンに拳を打ち付けるがびくともしない。 唇を奪われ生暖かいその感触に恐怖が襲う。 やめろ、この身体はあの男のものだ。お前のものじゃない。 「今度は逃げるんだな」 どういう心境だ?と問うロックオンに請う。 「頼む、やめてくれ」 しかし刹那の言葉など無視したロックオンは見たこともない残忍な笑みを見せたのだ。 「冗談はよしてくれ」 前は大人しくしてたのに今日は抵抗するのか? そういうプレイかと聞けば刹那が泣きそうな顔を見せた。いつも鉄面皮の刹那が、だ。 服を半ば剥ぎ取り、首筋に舌を這わせれば声を上げて逃げようとする。 一瞬、腕が緩んだのを幸いと刹那はタイミング良く海へと逃げていた。 「待てよ!刹那!」 波に押し戻され覚束ない足取りで沖へと逃げる刹那をロックオンが追う。 「バカだなぁ、それで逃げたつもりか?」 遠浅の海であってもいつか足は届かなくなる。頭一つ違う身長差はここでも有効で、波が刹那を飲み込む瞬間に抱き上げ捕まえた。 「やめろ! ロックオン…」 「なぁ刹那、大人しく俺に抱かれな」 力の勝るものが奪って良いんだろう? お前を力任せに蹂躙して何が悪いんだ? 「ちょっと傷つけちまうかもしれねーけど、壊すなんて野暮はしないって」 海の中、ギリギリ刹那の足が届かないところで口を塞ぎ、力任せに上着を引き裂いた。 「違っ、やめっ」 見たこともない表情で哀れな声を出し、離してくれと頼む刹那。ぞくりと背筋を這い上がる感覚。 元から軽い体重は浮力でさらに軽く感じられた。 刹那の下半身をまさぐるように片手を下げる。足が届かず不安定なのを拒否するかのように刹那がすがりついてくる。 多少の不便はあっても、このまま刹那の下を脱がせ己れの欲望を突き挿れるぐらいの余裕はあった。 刹那を背後からと抱き締め直し、沖へと顔を向けさせる。 高くはない波でも時折刹那の顔へかかるので、呼吸を確保するだけでも至難だろう。 案の定、抵抗は先程に比べ少なくなる。 水中で服を脱がせるのは大変だったが、尻だけ出せば良い。 刹那を慣らすなんて事もしない。 力が勝る自分が刹那を蹂躙するのは当たり前なのだ。 「っ、あーっ」 刹那の悲鳴に近い叫び声が波間に溶ける。 その声を聞きながら俺の中の大切にすべき温かい感情も冷たい海に溶けて消えていくようだった。 打ちては返す波の音。 ざざんざざんと、この身を清めこの身を穿つ。 これは罰だ。ロックオンの気持ちを知りながら、その気持ちを軽んじた。 アリーへの想いを心の奥底に大切に仕舞ったまま、上っ面で愛を否定した俺が受けるべき罰……。 枯れたかのように涙は出なかった。 ロク刹…ハッピーエンドになるはずが、修復不可能な関係に!? |